IDEAS 2004 レポート:キーノートセッション 『障害者をサポートする第三世代アプローチ』
(Access by Contract - The Third Generation Approach to Supporting People with Disabilities)

2004年11月4日に米国ワシントンDCで開催された「IDEAS 2004」にて、サンマイクロシステム社のチーフアクセシビリティアーキテクトであるピーター・コーン氏が、第三世代のデスクトップ環境におけるアクセシビリティについて語った。第三世代環境では、UIツールを含む全ての機能に「アクセシビリティAPI」の定義がなされ、アプリケーションは明確なインターフェースを持ち、これまでのように支援技術(Assistive Tecnology)だけがアクセシビリティの責任を負うことはないという。
支援技術は第二世代から第三世代へ
氏の講演は、第三世代のアプローチを紹介する前に、まず第一世代および第二世代のアクセシビリティの支援技術を振り返ることから始まった。
「アクセシビリティの支援技術は、ごく最近に始まったことではなく、1960年代には既に始まっています。しかし、その当時は支援技術の利用そのものが難しく、現在のようにウェブも存在しないので、できることがかぎられていました。第二世代、つまり現在では、支援技術が発展し環境も整ってきましたが、それでもなお機器を利用するにはドライバーのインストールやアップデートが強いられます。これでは、まだまだ十分なものとはいえません。第三世代においては、このような問題が生じないように、アクセシビリティの責任を支援技術が負うのではなく、OSそのものが責任を負うべきです。」と、氏は言う。
確かに、各OSが支援技術やそのAPIを標準実装すれば、あらゆるベンダーが、アクセシビリティに対応した機器やソフトウェアの開発を行いやすくなるだろう。また、ユーザにとっても面倒なドライバーのインストールやアップデートの必要がなくなり、支援技術を利用する前に立ちはだかる"バリア"も解消されるはずである。
この第三世代への動きは実際に動き始めており、各ベンダーは次のように対応を進めている。
- Microsoft Windows
- Longhorn UIオートメーション : stock UI, MS apps support
- Apple Macintosh
- アクセシビリティAPI:Carbon, Cocoa によるサポート
- Mac OS X v10.4は、これらの支援技術を含む
- Java platform
- アクセシビリティAPI:Swing, Oracle UIツールキット、その他
- JAWS, ZoomText, Virgoでは既に利用
- UNIX (Sun Solaris, GNU/Linux, 他)
- GTK+, OpenOffice, Mozilla, Qt, Javaは、アクセシビリティをサポート
- Gnopernicus, GOK, Dasherでは既に利用
第三世代による恩恵
Peter Korn氏は、サンマイクロシステム社が、これらの第三世代への開発を進めることを確約した後、この第三世代がもたらす恩恵について語った。
「第三世代では、ソフトウェア開発は明解でテストしやすく、かつ形式的に行えます。そのため支援技術ベンダーは、エンジニアリングではなく、ユーザに集中して開発を行なうことができるでしょう。そして、それによってユーザは、これまで以上により多くの機能を利用できるようになるはずです。また、米国政府にとっても支援技術の調達を行ないやすくなるでしょう。」
氏が言うように第三世代が確立し、OS側でアクセシブルな開発環境が用意されるのであれば、機器やソフトウェアの開発者は、これらのAPIを利用しない手はないだろう。手塩に掛けて開発している製品が誰でも利用できるようになることはもちろんのこと、競合製品に対するアドバンテージになるからである。次世代スタンダードに乗り遅れないためには、今からアクセシビリティ技術の採用を検討する必要があるだろう。
それから、氏が最後に述べた「米国政府の調達」という項目が興味深い。米国には連邦リハビリティテーション法508条があるため、アクセシブルでない機器やソフトウェアを調達した場合、ユーザが訴えを起こすことができるのだ。そのため、米国政府の職員は、調達する機器やソフトウェアがアクセシブルであるか常に気に掛けているのである。この発言は、そういった職員に対するものであろう。日本には、こういった法律は無いが、ぜひとも日本の政府/自治体職員にも調達する機器やソフトウェアがアクセシブルかどうか気にかけてほしいものである。
