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IDEAS 2004 レポート:マイク・パチェロ氏インタビュー

写真:ザ・パチェログループ代表のマイク・パチェロ氏(男性)と聞き手であるインフォアクシアの植木

マイク・パチェロ氏(以下、敬称略)は、欧米を中心に世界中を股にかけて活躍しているWebアクセシビリティ・コンサルタントの第一人者だ。著書『Web Accessibility for People with Disabilities』の日本語訳『ウェブ・アクセシビリティ すべての人に優しいWebデザイン』(アスキー)で日本でも知られている。セッションの前後でお話を聞くことができた。(聞き手:インフォアクシア)

今後の課題は、障害者ユーザーのためのユーザビリティ確保

この IDEAS 2004 でのWebアクセシビリティに関するセッションでは、全体を通して "ユーザビリティ" という言葉が何度も出てきたのが印象的でした。

パチェロ「508条の施行から3年余りが経過しましたが、その間に HTML のソースコードレベルでのテクニックは一通り出尽くして、もうみんな何をすればよいかは理解できてきていると思います。これからはその1つ先のレベルで、508条に準拠してアクセシビリティを確保した上でいかにユーザビリティにも配慮するかが課題になってくるでしょう。今年の IDEAS の各セッションでユーザビリティが取り上げられていたのはその現われだと思います。」

各セッションを通じて語られていた "ユーザビリティ" というのは、これまでニールセンの書籍などで語られてきたユーザビリティを指すのではなく、障害者ユーザーのためのユーザビリティというユーザー層を限定したものという理解でよいでしょうか?

パチェロ「その通りです。これまで、障害者ユーザーに対してはアクセシビリティだけ考えていればよいという風潮がありましたが、そうではなく彼らのアクセシビリティを確保した上でのユーザビリティの向上も考えていこうということです。」

アクセシブルなだけでは実際には不十分

例えば、画像の代替テキストも何かしら書いてあればチェックツールではOKになるし、508条に準拠していると言えるかもしれません。でも、その代替テキストが果たして肝心のユーザーにとって意味のある内容かどうかは別問題ですからね。

パチェロ「私のセッションの中でも話しましたが、チェックツールでの診断や専門家によるヒューリスティック評価だけでは、その判断ができません。アクセシブルでなおかつユーザブルなWebコンテンツでなければ、本当のユーザーエクスペリエンスを提供することはできないのです。」

写真の画像の代替テキストを記述する場合、私はそこに写真があるということが伝わるように "写真:製品のパッケージ" とか "製品パッケージの写真" と入れるようにしているのですが、どういう代替テキストを記述すればユーザーにとって有益なのかを考えなくてはいけない、ということですね。

パチェロ「まさしくその通りです。」

セッションの中では、"Discount User Testing" という言葉を使っていましたが、安価でも出来るというのには全くもって同感です。

パチェロ「本当はユーザビリティの専門知識やユーザーテストの経験のあるスタッフがいるのが理想ですが、Webサイトの数だけそういう人材がいるわけではありませんからね。まずはやってみることが大切だと思います。私が紹介したツールはどれも100ドル前後の価格で購入できますから、そういう安価なツールを上手く活用することもポイントですね。」

Webアプリケーションのアクセシビリティ確保も重要な課題

米国の連邦政府機関のWebサイトが今直面している課題は他に何かありますか?

パチェロ「Webアプリケーションのアクセシビリティ確保ですね。米国では省庁や州政府などがオンライン上で様々な行政手続サービスを提供しています。そういったユーザーとのインタラクションが発生するプログラムやシステムのアクセシビリティをいかに確保するか。HTMLのコーディングとはまた違った問題がいろいろありますからね。」

米国企業のWebサイトで実際にあった話

日本のJISは障害者だけでなく高齢者ユーザーも想定して策定されました。米国でも高齢者ユーザーへの配慮はアクセシビリティの考え方の中にあるのでしょうか?

パチェロ「米国人は、特に高齢者と障害者を同じ土俵の上で語りたがらないんですよね。特に高齢者の人たちは、自分の身体能力の衰えを身体障害と同レベルで扱われることにものすごく抵抗感を持っています。そういえば、ある金融業界のクライアントの案件でWebサイトのユーザーテストを実施したことがありました。その会社の主要顧客は60代が中心だったので、その世代のユーザーを集めたんですが、結果としてそのサイトはリニューアル後にはアクセシブルになりましたよ。そのクライアントは、アクセシビリティを全く意識していなくて、プロジェクトの命題もユーザビリティの向上だったんですけどね。結果的には、アクセシビリティのガイドラインにある項目とほぼ同じような改善策を講じることになったのです。もしかしたら、米国の企業サイトは高齢者層を主要顧客に持つところから、無意識のうちにアクセシビリティに取り組むことになるケースが多くなるかもしれません。」

今後日本でもありそうな話ですね。今日はお疲れのところ、ありがとうございました。

パチェロ「いつかまた日本に行く機会があるのを楽しみにしています。日本の皆さんによろしく!」

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