このページの先頭です
ここから本文です

IDEAS 2004 レポート:メアリー・セオフェイノス氏インタビュー

写真:米国商務省標準技術局のメアリー・セオフェイノス氏(女性)と聞き手であるインフォアクシアの植木

メアリー・セオフェイノス氏(以下、敬称略)は、米国保健社会福祉省(HHS)が運営する米国政府職員向けのWebユーザビリティ情報サイト『Usability.gov』に携わっていた。米国商務省標準技術局へ異動した現在もなお米国連邦政府におけるWebユーザビリティ研究の第一人者だ。セッション終了後にインタビューを申し込んだところ、快く応じてくれた。(聞き手:インフォアクシア)

米国の政府機関サイトが抱える課題

米国の連邦政府機関のWebサイトは、現時点でどの程度508条に準拠していると言えるのでしょうか?

セオフェイノス「司法省から近いうちに最新の報告書が出る予定です。前回のレポートと比較してどんな数字が出るのか、私自身も興味津々で待っているところです。」

508条に準拠する上で、米国の連邦政府機関のWebサイトが現在直面している最大の難題は何でしょうか?

セオフェイノス「莫大な数のPDFファイルをどうやってアクセシブルにするか、ということですね。連邦政府機関のWebサイトには、何年も前に作成されたアクセシブルではないPDFファイルが無数にあります。たしかに、最新バージョンの Adobe Acrobat を使えばアクセシブルなPDFファイルを作成することができますが、それ以前に作成されたPDFファイルを一括してアクセシブルに変換する方法は今のところないですからね。とても時間とコストのかかる作業であり、どの機関も頭を悩ませていると思います。しかし、アドビシステムズはPDFファイルのアクセシビリティ向上にとても熱心に取り組んできました。これはFlashのマクロメディアにも言えることですが、アドビシステムズとマクロメディアがこの数年間に取り組んできたアクセシビリティ機能の向上には敬意を表します。とても素晴らしいことです。」

日本の官公庁や自治体が抱えている課題の一つに、数年おきに定期的に実施される人事異動によって、せっかく積み上げてきたノウハウがゼロに戻ってしまうのではないかという懸念があります。米国ではいかがですか?

セオフェイノス「似たようなところがあるかもしれません。実は先日、連邦政府各省の508条コーディネーターという役職の人たちが集まる会議があったのですが、ほとんど知らない顔触れに入れ替わっていたんです。人が入れ替わることでそのWebサイトのアクセシビリティのレベルが一時的にでも落ちてしまうのは、米国でも同じように解決すべき課題の一つですね。」

日本におけるJIS化による反響に驚き

日本ではJISが今年の6月に制定されました。米国の508条のような法律ではないのですが、官公庁や自治体だけでなく、企業サイトも非常に熱心です。例えば、富士通、NEC、東芝、キヤノン、三越など。

セオフェイノス「マイク・パチェロ氏から、日本はそういうことに真面目に取り組む文化というか日本人の気質があると以前聞いたことがあります。きっと、JIS化されたことで一層拍車がかかっているんでしょうね。でも、法律ではないのに、それだけ熱心なのには驚かされます。米国人の私も何だか嬉しくなるいい話ですね。」

日本のJISは障害者だけでなく高齢者ユーザーも想定して策定されました。米国でも高齢者ユーザーへの配慮はアクセシビリティの考え方の中にあるのでしょうか?

セオフェイノス「米国も高齢者人口が増加していますが、まだこれからという状態かもしれません。ただ、視力や聴力が落ちるとか、指先が器用に動かせなくなるとか、加齢による衰えにより生じるアクセシビリティ上の問題の多くは共通点が多いでしょうし、障害者に対する配慮と同じような視点で考えていけばクリアできるのではないでしょうか。JISで先に学んだ日本の皆さんから教えてもらうのがいいかもしれませんね。」

WCAG 2.0 が連邦政府機関に与える影響

ところで、W3CではWCAGの新しいバージョン2.0の策定作業を進めていますが、もしWCAG 2.0 が勧告になったら米国の連邦政府機関のWebサイトにも影響があるのでしょうか?

セオフェイノス「おそらくないでしょうね。理由は簡単です。WCAGは法律ではないですから。それに、連邦政府機関のWebサイトは、508条に準拠するのに一生懸命です。508条よりも広範囲でより高いレベルを要求されるであろう WCAG 2.0 にも準拠するのは、プロの制作者ではない連邦政府職員にとってはより困難なことだと思います。」

なるほど。セッション終了直後でお疲れのところ、お時間いただきありがとうございました。

セオフェイノス「どういたしまして。また米国に来る機会があったら情報交換しましょう。」

ありがとうございます。是非よろしくお願いします。

関連情報

このページの先頭へ▲