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IDEAS 2004 レポート:セミナー『Building Compliant Websites Using the Latest Tools』

写真:左からセオフェイノス氏(女性)、ミラー氏(女性)、ピソッキー氏(男性)、ルー氏(女性)、そしてトーマス氏(男性)

アクセシブルなWebサイトを構築するということは、Flashやビデオなどのリッチメディア・コンテンツを使ってはいけない、ということではない。このセミナーでは、いかにアクセシビリティの要件を満たしながら、ダイナミックなWebアプリケーションを提供していくかをテーマにディスカッションが行われた。スピーカーは以下の4名。

  • モデレーター:メアリー・セオフェイノス氏(米国商務省標準技術局)
  • パネリスト:ビル・トーマス氏、ローラ・キーン氏(いずれも米国議会図書館)、ジョイス・ミラー氏(米国特許商標庁 508条コーディネーター)、グレッグ・ピソッキー氏(アドビシステムズ)、デブラ・ルー(テックアクセス)

PDFのアクセシビリティ向上への取り組み

まず、口火を切ったのはPDFでお馴染みのアドビシステムズのグレッグ・ピソッキー氏。

「アドビシステムズは、リハビリテーション法508条の施行の前後からPDFファイルのアクセシビリティ向上に取り組んできました。Adobe Acrobat のバージョン5.0以降、そのアクセシビリティ機能を向上させてきたことで、現在ではスクリーンリーダーの音声読み上げにも対応し、PDFの最大の特徴である様々なファイル形式の特性やレイアウトを維持したまま、リハビリテーション法508条の基準を満たしたPDFファイルの作成が可能です。Adobe Acrobat 6.0 では、ボタンをクリックするだけでアクセシブルなPDFファイルが生成できるようになりました。また最新バージョンの7.0では、機能面での大きな追加はありませんが、PDFファイルを生成するプロセスのユーザビリティを向上させています。」(グレッグ・ピソッキー氏)

PDFファイルは、タグ付きのPDFファイルとすることで HTML/XHTML と同等の文書構造を持たせることができるようになっている。タグ付きではないPDFファイルも、Adobe Acrobat を使用すれば、後からタグ情報を付加することも可能だ。ただし、これには相当の作業時間が必要であり、会場からもその手間が大変だと指摘する声も上がっていた。このあたりは、まずはアクセシブルなPDFファイルの制作方法を理解することから始めて、その対処法を考えていく以外に現時点では方法はなさそうだ。

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何よりも大切なのは制作者の意識と正しい実践

テックアクセスのデブラ・ルー氏は、制作者の意識と正しい実践なくしてアクセシブルなコンテンツは生まれないと力説する。

「Flashも、PDFも、複雑な構造のデータテーブルも、アクセシブルにすることができるということを皆さんには知っておいてほしいと思います。マクロメディアはFlashのアクセシビリティを向上させるためにものすごく努力をしてきました。その成果には目を見張るものがあります。アドビシステムズもピソッキー氏から話があったように、PDFファイルのアクセシビリティ向上につとめてきました。しかし、マクロメディアやアドビシステムズがどんなにアクセシビリティ機能を向上させても、結局はFlashやPDFを制作する制作者次第です。その意味では、制作者がどうすればアクセシブルに出来るのかについて学習してきちんと理解して、正しく実践することこそが大切です。これらをアクセシブルにするためには、制作者がやるべきことがたくさんあるというのが現状だと思います。」(デブラ・ルー氏)

JIS化を契機に、マクロメディアはFlash、アドビシステムズはPDF、それぞれのアクセシビリティに関する情報をそれぞれ日本語でも提供し始めている。少し前までこれらのファイル形式はアクセシビリティを阻害するものだと言われてきた。両社とも米国に本拠を置いていることもあり、米国でのリハビリテーション法施行を契機にそのアクセシビリティ機能を大幅に向上させてきたことはたしかだ。そして、その機能は日本語版にも反映されてきているが、制作者の立場からするとまだまだ分かりにくい点もあり、また作業時間などの負荷がかかるという課題もある。このセミナーでのディスカッションを聞く限りは、米国でもその点では同じ問題を抱えているようだ。

忘れてはならないユーザーの立場での視点

「最後に申し上げておきたいのは、やはりユーザーの視点です。テクノロジーは、テクノロジーでしかありません。PDF、Flash、やビデオといったリッチメディアは、ユーザーにコンテンツを提供するツールでしかないのです。そのことを忘れて、新しいバージョンが出たらその新しいバージョンを使わなくてはいけない、というように、テクノロジーだけを追いかけてはいけません。そういったツールを使うことが目的なのではなく、ユーザーに情報が伝わるかどうか、ユーザーがそれを使えるかどうか、ということを常に考えるのが何よりも大切だと思います。」(ビル・トーマス氏)

このセミナーは、時間の大半を会場の参加者からの質問に答えるというディスカッション形式で進められ、会場からは日頃現場で直面している課題が質問としてパネリストに次々と投げかけられた。Webコンテンツの制作現場では、新しい技術が登場するとすぐにそれを使いたくなりがちなところがある。ただし、そういった技術はあくまで手段でしかないのであり、そのことを忘れないでほしい、というメッセージが最後に送られた。技術やツールありきではなく、まずユーザーありきなのだ。

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