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IDEAS 2004 レポート:セミナー『E-Government and 508』

オンラインで行政サービスを提供する E-Government(電子政府)には、できるかぎり広範囲のユーザーが利用できることが要求される。このセミナーでは、機能的なニーズとアクセシビリティをいかに両立するかをテーマにディスカッションが行われた。スピーカーは以下の3名。

  • モデレーター:ジェイソン・ミラー氏(Government Computer News)
  • パネリスト:ラリー・マーサー氏(GoLearn.gov)、オスカー・モラレス氏(Environmental Protection Agency)

連邦政府機関42%、州政府37%、主要都市21%のWebサイトがアクセシブル

「ブラウン大学の調査結果によると、連邦政府機関のWebサイトは42%が W3CWCAG 1.0 の優先度1レベルの項目に準拠しているようです。ただし、昨年の47%からはややポイントを落としています。州政府のWebサイトは前年の33%に対して37%、主要都市は前年20%から21%となっています。この調査結果から、まだまだアクセシビリティの向上が課題として残っていることがうかがえます。」(ジェイソン・ミラー氏)

冒頭で米国の公的なWebサイトの現状を示す調査結果のデータが紹介された。この調査は、Watchfire社の『Bobby』というツールを使って機械的なチェックのみを行ったものだ。ツールだけでは全てのチェックは不可能だが、この数字は米国の公的なWebサイトの現状を知る上での参考とはなるだろう。連邦政府では更なるアクセシビリティの向上のために、プロの制作者ではない職員向けに『STEP 508』というツールを開発して提供するなどの側面的な支援も行っている。

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全ての障害に対応するアクセシブルなコンテンツ制作の困難さ

連邦政府職員を対象にしたe-Learningサイト『Gov Online Learning Center』を運営するラリー・マーサー氏は、自身の体験からアクセシビリティを確保する際の困難さを語った。

「例えば、e-Learningサイトのコンテンツでは、認知障害を持つユーザーのためにFlashなどによるアニメーションを用いることがあります。しかし、そういったアニメーションは視覚障害を持つユーザーのためには得策ではありません。我々は障害の種類に関係なく、全ての人にアクセシブルなe-Learningコンテンツを提供すべく努力していますが、それぞれの障害の特性全てをカバーしたコンテンツというのは、時には非常に困難なケースもあるのです。」(ラリー・マーサー氏)

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508条準拠だけでなくユーザビリティの確保も重要

また、オスカー・モラレス氏は、リハビリテーション法508条への準拠だけでなく、ユーザビリティの確保も重要な課題だと語った。

「Webアプリケーションのようにユーザーとのインタラクションがあるコンテンツやシステムにおいては、リハビリテーション法508条の要件を満たすだけでは十分とは言えません。それにプラスしてユーザビリティも確保しなければ、実際にはユーザーが使えないケースがあります。JAWSなどのスクリーンリーダーやチェックツールで検証するだけでなく、ユーザーテストを行ってユーザーによる検証を行うことが不可欠です。」(オスカー・モラレス氏)

リハビリテーション法508条が施行されたのが3年前の2001年の6月。この3年間でアクセシビリティへの意識は高まり、508条の要件を満たすことについては一定レベルまでは浸透してきていることは大きな前進といえよう。しかし、そもそも行政サービスをインターネット上で提供する上で重要なのは、ユーザーがそれを利用することが出来て、その利便性を享受できることにある。508条に準拠することが目的ではなく、あくまで最低限満たすべきガイドラインでしかないのだ。

アクセシビリティとユーザビリティの両立

「実際の現場では、508条のガイドラインを満たすことでアクセシビリティは確保されても、それがかえってユーザビリティを損なってしまうケースもあります。そのようなときは、やはりユーザーによる検証を行うことがとても大切で、その上でそのコンテンツをどうすべきかの最終判断を下すべきです。検証結果から得られたノウハウを、"これはやってはいけない"と"こうすべき"というようにガイドラインとしてルール化していく必要があるでしょうね。」(ラリー・マーサー氏)

この最初のセミナーでパネリストの口から "ユーザビリティ" や "ユーザーテスティング" という言葉が何度も出てきた。リハビリテーション法508条は法律だけに、そのプレッシャーから連邦政府職員のアクセシビリティ確保に対する意識は着実に高まってきたものの、肝心のユーザーの存在を見失ってはいけないという警鐘だ。Webサイトの価値は、情報がユーザーにきちんと伝わり、ユーザーがその機能を十分に活用できてこそ初めて生まれる、という基本を常に念頭に置いておくことが重要だと改めて感じた。

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