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Enhancing Accessibility Through Usability Inspections And Usability Testing

米国では "アクセシビリティ" といえば、想定されるユーザーは主に障害者。Web サイトが、ユーザーにとって分かりやすく使いやすいものでなければ意味がないのは、障害の有無に関係なく共通したことだ。このセッションでは、"アクセシブルなユーザー・エクスペリエンスの向上(AUE:Accessible User Experience")を提唱するマイク・パチェロ氏が、障害者ユーザーを対象にしたユーザーテストの実践ノウハウを紹介した。

"Think Accessibility" の考え方を持とう

「障害者ユーザーのためのユーザー・インターフェースを向上させるためには、製品開発サイクルの中にアクセシビリティの考え方を組み込んでいかなくてはなりません。コンセプト考案、設計、開発、製品管理、マニュアルの文書化、ユーザーサポート、品質保証、マーケティング、販売、といった一連の工程においてです。障害者ユーザーが使用している支援技術と主流となっている技術との間には、常にギャップとジレンマがあるものです。そして、この点においては、開発側にはその組織内のマネージャー、開発者、販売担当者などのあらゆるポジションにおいて、エキスパートがほとんどいないという課題もあります。

写真:講演するマイク・パチェロ氏

そこで、ユーザーテストを実践することにより、"Think Accessibility" という考え方を組織内に作り出すことを提案したいと思います。ユーザー中心設計(User Centered Design)というアプローチがありますが、アクセシビリティはその核となる要素の一つです。ユーザー中心設計というのは、身の回りにあるもの全てのデザインに用いられる共通のアプローチであり、そこには "Think Accessibility" の考え方が求められます。
規格やガイドラインにある技術解説やテクニックにばかり気をとられてはいけません。それよりも優先すべきなのはユーザーのニーズであり、ユーザーが何を求めているのかをきちんと把握することが大切です。アクセシブルであり、かつ分かりやすく使いやすいモノづくりを目指すべきです。そのためには、製品開発サイクルにユーザーを参加させながら、創造力を働かせていくことが大切なのです。」(The Paciello Group マイク・パチェロ氏)

冒頭でパチェロ氏は、"Think Accessibility" というキャッチフレーズを使って、ジェスチャーを交えながら彼独特のプレゼンテーションであっという間に聴衆を惹きつけてしまった。昨年11月の『IDEAS 2004』でもそうだったが、508条施行により基準をクリアするためのテクニックばかりに走ってしまったことへの警鐘というか、"ユーザーの存在を忘れていませんか?" というメッセージを強く感じる。いくら基準をクリアしていても、ユーザーが使えなければそのサイトの存在意義はないも同然だろう。アクセシビリティが "形骸化" してしまっては意味がない。

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専門家による検証とユーザーによる検証のミックス

「障害者ユーザーにとって、本当に使えるかどうかを検証するには、専門家による検証とユーザーによる検証をミックスして行うのが効果的です。ここでいう "専門家" というのは、アクセシビリティの規格やガイドラインと支援技術の双方に精通した人材である必要があります。そして、ユーザーによる検証は、開発サイクルにおいては初期のデザイン段階で行い、出来るだけ広範囲の障害者ユーザーに参加してもらうことをお奨めします。大手企業であれば社員の中に障害のある方々がいるでしょうし、組織内で確保するのが困難な場合は、障害者団体などに協力を依頼するとよいでしょう。そういった団体にコンタクトすると、喜んで協力してくれるはずです。
こういった検証の目的は、ユーザー・インターフェース上の問題を発見することと、その改善案を検討することです。問題を発見する際のポイントとしては、次の3つが挙げられます。まず、ナビゲーションなどが使いやすいかどうか、次に、ユーザーがそのインターフェースを気に入っているかどうか、そしてエラーを起こす頻度はどうか、というところに着目してください。
検証結果をまとめるレポートでは、発見された問題箇所、およびそのデザイン改善案をセットにしてください。そして、全ての問題箇所についての優先順位付けを行って、可能なら改善作業の費用対効果まで見積もることが出来ればベストでしょう。」(マイク・パチェロ氏)

ユーザーテストのキーワードは、"聞く" と "観察する"

さらに、パチェロ氏は、自身が実施した全盲の女性ユーザーによるユーザーテストのビデオを紹介しながら、ユーザーテストを実施する際のポイントを紹介した。

「キーワードは、"聞く" と "観察する" です。ユーザーが操作している間は、助け舟を出してはいけません。とにかくユーザーの操作や発した言葉などを細かくメモにとるようにします。特に、エラーを起こした際には注意深く観察して、ユーザーの言葉に耳を傾けてください。テスト終了後は、"何が大変だったか" ということを中心にヒアリングを行います。その際に、ユーザーは "こういうふうにしたほうがいい" といった提案をしてくれることがありますので、それを聞き逃さないでください。」(マイク・パチェロ氏)

ユーザー中心設計という考え方を強調しながら、"アクセシビリティ" を開発サイクルの各プロセスの中に組み込んでいくことを実に分かりやすく解説してくれたパチェロ氏。1時間があっという間に過ぎた。障害者ユーザーにとってのユーザビリティというのは、まだまだ日本国内でも検証が十分されていない。こればかりは、やはり障害者ユーザーによるユーザーテストを実践していかないことには、本当の問題がどこに潜んでいるかは分からないだろう。JISで規格化された次に取り組むべきステップの一つであることは間違いない。

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