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Japanese Industrial Standard Of Web Content Accessibility Guidelines And International Standard Harmonization

写真:世界中のアクセシビリティ専門家や有識者が詰め掛けた会場

昨年6月に制定された JIS X 8341-3。その原案を作成したワーキンググループの後を受けて、日本規格協会の情報技術標準化研究センターでは、今年度より情報アクセシビリティ国際標準化に関する調査研究開発委員会にウェブアクセシビリティ国際規格調査研究部会を設置している。この研究部会の目的は大きく分けて2つある。JIS X 8341-3 の啓蒙、普及の促進とWCAG 2.0 などの国際規格との協調である。昨年の『CSUN』では、JIS X 8341-3 制定のアナウンスを行ったが、今年はその JIS X 8341-3 と W3Cが策定作業を進めている WCAG 2.0 との協調に向けた取り組みを中心に、その活動内容のプレゼンテーションを行った。

JIS の概要、JIS X 8341-3 の位置づけ、JIS と ISO の関係性

写真:JISを解説する日本規格協会の関氏

「JIS というのは、"Japanese Industrial Standards" の略で、日本の国家規格です。これは、法的な強制力を持つものではありませんが、工業標準化法という関連法規の中で、"国及び地方公共団体は、買入れる鉱工業製品に関する仕様を定めるとき日本工業規格を尊重しなければならない。"という一文があります。そして、情報アクセシビリティに関する規格が JIS として昨年制定されましたが、ガイド71を頂点とするピラミッド構造になっており、2階層目には共通指針としての JIS X 8341-1 があり、その下の3階層目に個別規格が幾つか並んでいます。昨年の6月に制定された Web コンテンツの規格である JIS X 8341-3 は、その3階層目の個別規格の一つという位置づけになります。」(日本規格協会 情報技術標準化研究センター 関 達雄氏)

まず、日本規格協会の関氏が、JIS の概要、JIS X 8341-3の概要、そして JISとISOの関係性などを、このプレゼンテーションに参加した諸外国の関係者に分かりやすく説明した。とにかく、このセッションは注目度が高く、W3C/WAIの WCAG ワーキンググループの主要メンバー、シンシア・ワデル氏、マイク・パチェロ氏などをはじめとする海外の Web アクセシビリティ専門家、そして日本の Web アクセシビリティ専門家諸氏が一堂に会して、会場内は熱気に溢れていたのが印象的であった。

JIS X 8341-3 と WCAG 2.0 との協調

続いて、ウェブアクセシビリティ国際規格調査研究部会の主査をつとめる渡辺隆行氏(ITRC)が、Web コンテンツのアクセシビリティ・ガイドラインの国際協調について、その重要性を解説した。

写真:JIS と WCAG の協調について語る渡辺氏

「JIS X 8341-3は、現行の WCAG 1.0を参考にしつつ、WCAG ワーキンググループで策定中の WCAG 2.0 の方向性も考慮に入れながら策定しました。現在、日本規格協会の情報技術標準化研究センター(INSTAC)のウェブアクセシビリティ国際規格調査研究部会は、WCAG ワーキンググループと協力して、JIS X 8341-3 と WCAG 2.0 の協調を図っています。昨年9月には、WCAG 2.0 のワーキングドラフトに対し当部会からパブリックコメントを提出して、日本語特有の問題など、WCAG 2.0 に不足している部分などを指摘させていただき、その後のワーキンググループの議論の中でも検討していただきました。JIS X 8341-3 は、内容的にちょうど WCAG 1.0 と WCAG 2.0 の中間的なものであるという見方もできるので、"WCAG 1.5" という言い方ができるかもしれません。

世界各国で通用するガイドラインを作成するためには、非英語圏である日本やその他のアジア諸国でも適用できる内容にしていくことが重要です。韓国では2003年に独自のWebガイドラン "KWCAG(Korean Web Content Accessibility Guidelines)" を作成しましたが、その内容は W3C の WCAG 2.0 ワーキングドラフトとはかなり異なっているのが現状なのです。」(東京女子大学 渡辺隆行氏)

渡辺氏は、ウェブアクセシビリティ国際規格調査研究部会の主査をつとめる一方で、WCAG ワーキンググループにも参加している。これにより、WCAG ワーキンググループでも非英語圏における問題への理解が高まってきており、たとえば、JIS X 8341-3 で日本語特有の問題として項目になった "単語の中にスペースを入れてはならない" というガイドラインが、WCAG 2.0 ワーキングドラフトの中にも採り入れられるなどしている。

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JIS X 8341-3 の普及には、啓蒙や教育がまだ必要

「日本国内で JIS X 8341-3 を普及させていく上では、啓蒙や教育がまだ必要であり、ガイドラインだけでは Web アクセシビリティの考え方を広めていくには不十分です。オーサリングツール、CMS、デザイン・テンプレート、チェックツール、そしてプロセスのモデル、そういったものが必要とされています。また、一方ではユーザーエージェントのサポートが言語ごとに異なるという問題もあります。そして、調査研究に基づいた Web アクセシビリティこそが求められていると考えています。」(渡辺隆行氏)

プレゼンテーション後の質疑応答では、"日本の高齢者は Web をどの程度利用しているのか"、"JIS X 8341-3 の普及には何が必要か" といったテーマで質問やディスカッションが行われるなど、関心の高さとより理解を深めようとする参加者の姿勢が感じられた。

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