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Making Large Commercial Sites Accessible "HP Shares Best Practices"

この『CSUN 2005』では、連日数多くのプレゼンテーションが行われていたが、その中で最も注目していたのがこのセッションだ。日本では、よくベスト・プラクティスとして語られる富士通をはじめ、最近では三井住友銀行や朝日新聞社などもアクセシビリティへの対応に着手するなど、民間企業サイトが積極的である。はたして、アメリカの企業サイトがどのような取り組みをしているのか。プレゼンテーションが始まるや参加者から次々に質問が出るなど、活気のあるセッションとなった。

企業サイトとしてアクセシビリティに取り組む意義とリスク

写真:ヒューレット・パッカード社のナターシャ・リプキナ氏

「このセッションでは、いち早く Web サイトのアクセシビリティに組織的に取り組んだ弊社が体験したことをお話します。そして、これから取り組もうとしている企業サイトの運営者の皆さんには、私たちの経験談をここで共有して、同じ失敗を繰り返さないように自社サイトでの戦略を考えていただけたらと思います。

最初に、ビジネスという観点から、Web アクセシビリティに取り組む意義を確認しましょう。まず、企業として法律や規格を遵守するということが挙げられると思います。そして、市場シェアや売上のアップ、企業ブランドイメージの向上、といったポイントも重要です。また、企業としての社会的責任(CSR)という側面もあるでしょう。何よりも Web サイトの運用管理、サイトのユーザビリティおよびパフォーマンスの改善、などもビジネスに直結してくる部分です。

逆に、アクセシビリティに取り組まなかったときの企業にとってのリスクは何でしょう。法的責任、既存および潜在顧客の損失、市場競争力の低下、ブランドイメージのダウン、サイト全体のユーザビリティ低下、サイト運営の非効率化、といったことが挙げられるでしょう。」(ヒューレット・パッカード社 ナターシャ・リプキナ氏)

アメリカでは、2001年にリハビリテーション法508条が施行され、連邦政府機関に対してはアクセシビリティの確保が法律により義務付けられている。企業に関しては、その対象外ではあるが、連邦政府を顧客としてビジネスを展開していく上では必然的に遵守しなくてはならないという。法の遵守や法的責任というキーワードが出てきたのは、そういった背景からであろう。

組織的に実践するためのカギ

「弊社のような大手企業が Web アクセシビリティに取り組む上では、組織を動かすための戦略をプランニングする必要があります。まず、経営幹部の支援を取り付けることです。経営層を味方につけることで、予算や人的リソースなどを確保しやすくなります。また、社内に経営幹部もメンバーに入った委員会を設置して、組織横断的なチームを組織して、本社および各事業部に推進役となる人を作るのです。

弊社では社内啓蒙キャンペーンを実施したりもしました。あるときには経営幹部からのトップダウン的なメッセージ、そしてセミナーやニュースレターで情報を提供したり、時には各事業部や各地域の社員のところに足を運んでプレゼンテーションをしたりもしました。」(ナターシャ・リプキナ氏)

リプキナ氏は、大規模な企業組織を動かす上でのカギについて、かなり具体的なノウハウを体験談に基づいて紹介してくれた。会場にはやはり大手企業など大規模な組織で Web サイトを運営している立場の人が参加しており、このあたりは次から次へと質問が飛び交い、関心の高さが感じられた。

写真:制作現場での体験談を語るメリンダ・ステルダー氏

「現場レベルで最初にやるべきことは、ガイドラインを策定することです。弊社では、W3CWCAG 1.0 の優先度1および優先度2の項目と508条のガイドラインをベースにしました。次に、それを基にしたページデザインのテンプレートを作成したり、制作に使用するツールを開発したり、社員教育のトレーニングを実施したりしました。このトレーニングは継続的に実施することに意味があります。また、スクリーンリーダーの実習はかなり効果がありました。

そして、やはり社内の人材だけでは限界がありますので、Web アクセシビリティの専門家にコンサルティングしていただいたり、あるいはマクロメディアやアドビといったメーカーとパートナーシップを組んだり、社外の人材やネットワークも有効に活用しました。」(メリンダ・ステルダー氏)

効果的だったのは、ツールをカスタマイズして制作者の負担が軽くなるようにしたこと、問題箇所を発見したらそのコンテンツの担当者に分かりやすい修正方法とともにフィードバックしたこと、だったという。そして、Web サイトのライフサイクルにアクセシビリティを組み込むことが重要で、継続的なトレーニングやアドバイスなどで現場をフォローアップしていくことが大切だと語っていた。組織が大きければ大きいほど、サイトの制作・運営に関わる人の数も多くなる。ツールで作業を効率化していきながらも全てを自動化できる方法はないわけで、やはりトレーニングとフォローアップの継続という地道な取り組みが欠かせないようだ。

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