このページの先頭です
ここから本文です

単独インタビュー:W3C/WAI WCAG ワーキンググループ グレッグ・バンダーハイデン氏、ウェンディ・チゾルム氏

『CSUN 2005』終了後の翌日から、W3C / WAIWCAG ワーキンググループのミーティングが2日間行われた。このミーティングに参加するのは前回の昨年10月に開催されたダブリン(アイルランド)に続き2回目であったが、ちょうど CSUN 開催期間中に正式に WCAG ワーキンググループのメンバーとなり、今回はワーキンググループの一員として初のミーティング参加となった。そこで、このワーキンググループの主査であるグレッグ・バンダーハイデン氏と W3C / WAI の WCAG 担当であるウェンディ・チゾルム氏に単独インタビューをお願いして、WCAG 2.0 のことなどお話を伺いました。(聞き手 / インフォアクシア 植木)

ワーキンググループでは "WCAG 2.0" を策定作業中

写真:WCAG ワーキンググループ主査のグレッグ・バンダーハイデン氏と WAI のウェンディ・チゾルム氏

植木:「まず、WCAG ワーキンググループについて、簡単にご紹介いただけますか?」

グレッグ・バンダーハイデン氏(以下、グレッグ):「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)のワーキンググループは、障害者ユーザーが Web コンテンツにダイレクトに、あるいは支援技術などを使ってアクセスができるようにするには、Web コンテンツをどう作ればよいかを示すガイドラインを作成しています。」

ウェンディ・チゾルム氏(以下、ウェンディ):「W3C(World Wide Web Consortium)の WAI(Web Accessibility Initiative)では、Web コンテンツのガイドラインである WCAG だけでなく、オーサリングツール開発者のためのガイドラインである ATAG(Authoring Tool Accessibility Guidelines)、ブラウザやスクリーンリーダーなどのユーザーエージェント開発者のための UAAG(User Agent Guidelines)も策定しています。つまり、Web をアクセシブルにしていくには、コンテンツだけではなく、オーサリングツールやユーザーエージェントもあわせて考えていく必要があるからなのです。」

グレッグ:「WAI のサイトに行けば、このあたりの詳しい情報が得られますよ。」

関連情報

"WCAG 2.0" と "WCAG 1.0" の違い

植木:「WCAG ワーキンググループには、どのようなメンバーが参加しているのでしょうか?」

ウェンディ:「WAI の活動には、民間企業、行政機関、教育機関、それに日本の JIS やヨーロッパの EU の規格の関係者など、各国から多くの方々が参加しています。その中で、WCAG の ワーキンググループには約20~25名が積極的に参加していて、WCAG のメーリングリストには現在150名が登録されています。」

植木:「WCAG 2.0 の方向性についてお聞きしたいのですが、WCAG 1.0 との大きな違いは何でしょう?」

グレッグ:「WCAG 1.0は、HTML や CSS など特定の Web 技術に依存した内容でした。WCAG 2.0 はできるだけそういった特定の技術に依存しないで、どういう問題のために何をすべきかというものにしようと試みています。そして、それを実践するためのテクニック文書を HTML や CSS などの特定の技術ごとに別の文書として提供するつもりです。また、WCAG 1.0ではチェックポイントごとに優先度を定めていましたが、WCAG 2.0 では達成基準という考え方を採り入れて3つのレベルを設定しています。」

ウェンディ:「それから、WCAG 2.0 は、より検証可能であること、そして実際の現場で皆さんがより使いやすいものであること、というのを念頭に置いています。」

"WCAG 2.0" の重要なテーマは『国際化』

グレッグ:「また、国際化というのも重要なテーマです。ガイドライン文書は英語ですが、それが各国の言語に翻訳できるかどうかも重要です。どうしても英語中心になってしまうので、他の言語に翻訳しても意味が通じるかどうかという点にも配慮しています。」

植木:「ワーキンググループには日本のJISの委員会から主査の渡辺氏(東京女子大学)が参加していて、このたび私も委員として参加させていただくことになりましたが、日本からの参加メンバーに対して期待していることは何ですか?」

グレッグ:「日本には存在するけど英語圏では存在しない問題、その逆で英語圏には存在するけど日本には存在しない問題、というのがあることが明確になりました。おかげで、ガイドラインが特定の国だけでしか通用しないという問題を解決できそうですし、引き続きそういった点の指摘をいただけたらと思っています。また、Web コンテンツの制作者の皆さんが戸惑わないように、日本の JIS と W3C の WCAG 2.0 をできるだけ協調させていくことも重要なことです。」

ウェンディ:「それに、WCAG 2.0 ではガイドライン本文以外にテクニック文書がたくさん提供されますので、それらを日本語化したり、そこに日本に特有の事例を追加するといったことも大切なことだと思います。」

世界中で加速するアクセシビリティへの取り組み

植木:「日本以外でアクセシビリティに熱心な国はどこですか?」

グレッグ:「興味深いのは、熱心な国でもその国によってアクセシビリティへの取り組み方やアプローチは様々なことです。例えば、同じヨーロッパでも、ドイツにはドイツなりの、イタリアにはイタリアなりの取り組み方をしています。きっと、その国の文化などが影響しているんでしょうね。でも昨年は世界中でアクセシビリティに対する取り組みが大きく一歩進んだ感があります。」

ウェンディ:「例えば、アジアでは韓国、中国、それにインドなども動き始めているようです。また、南アメリカでもそういう動きが出てきています。」

植木:「日本では民間企業も富士通をはじめ、三越、三井住友銀行、朝日新聞など、大手を中心に積極的に取り組み始めています。海外に拠点のある大企業などは、運用のことも考えれば、できればガイドラインは世界中で共通にしてほしいと考えているはずです。」

グレッグ:「そういう意味でも、渡辺さんと植木さんには、ガイドラインで英語中心になってしまっている部分、日本語のサイトには適用できない部分、というのを今後も指摘してもらいたいですね。国によっては、1つの国でも複数の言語が使用されている国もありますし、言語の違いによって WCAG 2.0 が無意味になるのは避けなくてはなりません。お二人に日本語という視点から意見を出してもらうことで、WCAG 2.0 が特定の言語に依存しないガイドラインになり、いろいろな国で使ってもらえるようになると思います。」

チゾルム氏、5月に来日して都内で講演

植木:「では、最後に日本の皆さんへメッセージをお願いします。」

グレッグ:「Web は私たちの身の回りの他のものと違って、アクセシブルにしやすいものだと思います。それにみんな歳をとりますよね。みんな自分が若いときには自分は障害を持つことはないと信じてますが(苦笑)、でも人間は生きているかぎり、歳をとれば衰えてくるし、何らかの障害を抱えた状態になるものです。つまり、誰もがいつかはアクセシビリティを必要とするわけです。私が望むのは、"Longer Life and Accessible Web" ですね(笑)」

ウェンディ:「5月には東京で講演する予定があります。その際には是非一人でも多くの皆さんにお会いしたいと思っています。」

植木:「お忙しいところ、どうもありがとうございました。」

W3C / WAI のウェンディ・チゾルム氏が5月に来日して都内で講演を行う予定です。詳細は決まり次第、このサイトやメールニュースでもご案内します。

このページの先頭へ▲