海外諸国の動向
Webアクセシビリティに関しては、日本よりも海外諸国のほうがその取り組みは先行しています。そこで、海外諸国における主な動向をご紹介しましょう。
国連における国際的なコンセンサス
まず、アクセシビリティの基本的な考え方でもある高齢者や障害者にも配慮するということは、1990年代前半に国連において国際的な共通認識となっています。
- 1991年 国連:高齢者のための国連原則
- 1993年 国連:障害者の機会均等化に関する標準規則
これを受けて、世界各国の政府は社会全体のアクセシビリティを向上するための様々な施策を実行してきています。具体的には、以下のようなものです。
- 製品の安全、使用、表示への配慮
- 住宅、交通への配慮
- 通信、コミュニケーションへの配慮
Webアクセシビリティの取り組み
では、Webアクセシビリティにおける主な動向をご紹介していきましょう。
W3C:1999年にWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG) 1.0を策定
Web技術に関する世界的な標準化団体であるW3CのWAIが、1999年5月5日にWebアクセシビリティに関する初のガイドラインとして『WCAG 1.0』を制定しました。それ以来、世界各国が定めるガイドラインや日本でも自治体や企業が独自に定めるガイドラインのベースとなり、名実ともに世界のデファクト・スタンダードとなっています。制定から5年が経過した現在、新バージョンの2.0の策定作業が進められており、そのワーキングドラフトはWAIのWebサイトで公開されています。
オーストラリア:2000年のシドニーオリンピックでの出来事
2000年のシドニー・オリンピックで、オーストラリア在住の全盲のマグワイヤ氏が、シドニー・オリンピックの試合結果を確認するために公式サイトをチェックしようとしたところ、スクリーンリーダーで読み上げることができませんでした。そこで、彼はこのWebサイトがアクセシブルではないということで、オーストラリアのDDA(Disability Discrimination Act)に違反していると訴訟を起こしたのです。これはオーストラリアではもちろん、世界でも初めてのWebアクセシビリティに関する判例となったのですが、裁判の結果、オーストラリア政府はオリンピック委員会にWebサイトの修正を命じました。
米国:2001年6月にリハビリテーション法508条の改正
Webアクセシビリティの先行事例としてよく紹介されるのが、米国のリハビリテーション法508条です。2001年6月に行われた改正で、米国連邦政府のWebサイトおよびイントラネットにおけるWebアクセシビリティの確保が義務付けられ、16項目からなるガイドラインが制定されました。他のガイドラインと異なり、もしガイドラインに適合していない場合には訴訟を起こされるという強制力を伴っている点が大きな特長です。また、これと前後して米国の各州政府もWebアクセシビリティの確保を定めるようになり、現時点ではニューメキシコ州以外の州では、州法やガイドラインとして何らかの規定があります。
その他の海外諸国
カナダでは、米国のリハビリテーション法508条改正よりも前に『Common Look and Feel』というポリシーを策定して、Webアクセシビリティの確保に取り組んでいます。また、ヨーロッパでも最近イギリスやイタリアなどがWebアクセシビリティに関するポリシーや法律を新たに制定するなどの動きがあります。日本に近いアジア諸国では、タイが具体的な数値目標を掲げて政府機関サイトのWebアクセシビリティ確保に取り組んでいるほか、韓国でも情報バリアフリーに関する法律を制定して具体的なガイドライン策定作業が始まっているようです。
