Webアクセシビリティとは?

「Webアクセシビリティとは何かを100文字以内で答えなさい」という問題を出されたら、皆さんならどんなふうに回答しますか?

例えば、エー イレブン ワイでは、次のように考えています。

「より多くのユーザーが、より多くの利用環境から、より多くの場面や状況で、Webコンテンツを使えるようにすること。」であり、それは「時代や社会からの要請」でもある。

また、企業や公的機関のWeb担当者さんの立場で考えれば、次のように言うこともできるでしょう。

Webサイトやアプリケーション等で提供する情報、サービスや機能を、一人でも多くのユーザーが利用できるようにするために不可欠な品質基準の1つ。

あるいは、

より多くのデバイス、利用環境をサポートすることによって、一人でも多くのユーザーに、より多くの場面や状況で、Webサイトやアプリケーション等で提供する情報、サービスや機能を利用してもらえるようにすること。

WWWの発案者ティム・バーナーズ=リー氏の言葉

ティム・バーナーズ=リー氏をご存知ですか? World Wide Webを考案し、ハイパーテキストシステムを実装、開発し、URL、HTTP、HTMLを最初の設計したた人物です。W3C(World Wide Web Consortium)を創設したことでも知られています。W3Cは、さまざまなWeb技術の標準化を推進している国際的な団体で、最も身近なところでいえばHTMLやCSSなどの仕様を策定しています。

そのティム・バーナーズ=リー氏による有名な言葉がこちら。

The power of the Web is in its universality. Access by everyone regardless of disability is an essential aspect.

Tim Berners-Lee, W3C Director and inventor of the World Wide Web

彼は「Webのパワーは、その普遍性にある。障害の有無に関係なく、誰もが使えることが、その本質である。」と言っています。そもそもWebがWebであるために、アクセシビリティは不可欠な要素の一つであるといってもよいでしょう。

W3Cによる「Webアクセシビリティ」の定義

W3Cでアクセシビリティを担当しているWAI(Web Accessibility Initiative)のWebサイトでは、次のように書かれています。

Web accessibility means that people with disabilities can use the Web.

“What is Web Accessibility” – Introduction to Web Accessibility | W3C WAI

「Webアクセシビリティとは、障害のある人がWebを使えるようにすることを指す。」というわけです。WAIでは、Webアクセシビリティの構成要素として、Webコンテンツ、オーサリングツール、そしてユーザーエージェントの3つを挙げ、それぞれに対するアクセシビリティ・ガイドラインを策定しています。

しかし、その考えかたは間違っている?

2015年2月、Web制作・開発者向けのオンラインマガジンの『A List Apart』に、次のような記事が掲載されました。

We need to change the way we talk about accessibility. Most people are taught that “web accessibility means that people with disabilities can use the Web”—the official definition from the W3C. This is wrong. Web accessibility means that people can use the web.

“Reframing Accessibility for the Web” by Anne Gibson February 03, 2015

筆者は「私たちはアクセシビリティについて考え方を改める必要がある。多くの人は、W3Cによるオフィシャルな定義から「Webアクセシビリティとは、障害のある人がWebを使えるようにすることを指す。」と教えられてきた。これは間違いだ。Webアクセシビリティは、みんながWebを使えるようにすることである。」と書いています。

Webアクセシビリティは、何も障害のある人だけに限った話ではないというのです。

新しい「アクセシビリティ」

毎年世界各地で開催されている国際的なカンファレンス『Web for All Confarence』。2014年4月に韓国のソウルで開催されたとき、テーマは “The New Accessibility” でした。公式Webサイトには、次のようなメッセージが書かれていました。

Accessibility was once viewed as benefiting people with disabilities only — not anymore! ……devices are diverse and their use varies across every conceivable context.

The 11th Web for All Conference

「アクセシビリティは、障害のある人だけのためのものとしてこれまで見られてきた - もはやそうではない! デバイスが多様化していて、コンテキストによって使いかたも多種多様なのである。」というわけです。

このように、Webアクセシビリティは、いわゆる障害者対応というだけではないという考えかたが国内外で広まりつつあります。実際に、日本工業規格の『JIS X 8341-3:2016』やW3C勧告の『Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0』にあるWebコンテンツの達成基準には、障害のある人という特定のユーザーグループのためだけにやることは、ほとんどありません。

先に紹介したティム・バーナーズ=リー氏は、こんな言葉も残しています。

Whatever the device you use for getting your information out, it should be the same information.

Tim Berners-Lee, W3C Director and inventor of the World Wide Web

「情報を取得するためにどんなデバイスを使用していたとしても、取得できる情報は同じであるべきだ。」というわけです。ユーザーが使用しているデバイスやユーザーエージェント(ブラウザや支援技術など)によって、Webコンテンツの画面での見えかたはさまざまです。その見えかたをユーザー一人ひとりがカスタマイズすることも可能です。さらに、合成音声や点字などに変換されることもあり、Webコンテンツには実にいろいろなカタチがあります。

ユーザーがどのようなカタチでWebコンテンツを受け取ったとしても、その中身は同じであるべきです。それが「Webアクセシビリティ」の基本的な考えかたといってもよいでしょう。

「Webアクセシビリティ」を考える視点

そして、「Webアクセシビリティとは何か?」という問いかけに答えるためには、次のような視点から考えることが重要です。