改正版 JIS X 8341-3 に適合した実装方法
「箇条7 ウェブコンテンツに関する要件」の概要
UAIセミナー「Webアクセシビリティ@秋葉原」-JIS改正原案の紹介-(2009年5月22日、ITRC研究会)
1.「箇条 7. ウェブコンテンツに関する要件」の読みかた
まずは、アウトラインの把握から。
ウェブコンテンツに関する要件
2004年版: 5. 開発及び制作に関する個別要件
- 5.1 規格及び仕様
- 5.2 構造及び表示スタイル
- 5.3 操作及び入力
- 5.4 非テキスト情報
- 5.5 色及び形
- 5.6 文字
- 5.7 音
- 5.8 速度
- 5.9 言語
2009年版: 7.ウェブコンテンツに関する要件
- 7.1 知覚可能に関する原則
- 7.2 操作可能に関する原則
- 7.3 理解可能に関する原則
- 7.4 堅牢性に関する原則
「ウェブコンテンツに関する要件」 の構成
2009年版は、3階層のレイヤーで構成
4つの原則
- 1. 知覚可能 (Perceivable)
- 情報及びユーザインタフェース・コンポーネントは,利用者が知覚できる方法で利用者に提示可能でなければならない。
- 2. 操作可能 (Operable)
- ユーザインタフェース・コンポーネント及びナビゲーションは操作可能でなければならない。
- 3. 理解可能 (Understandable)
- 情報及びユーザインタフェースの操作は理解可能でなければならない。
- 4. 堅牢性 (Robust)
- コンテンツは,様々なユーザエージェントが確実に解釈できるように十分に堅牢でなければならない。
「7.1 知覚可能に関する原則」 のガイドライン
- 7.1.1 代替テキスト:
- すべての非テキストコンテンツには,拡大印刷,点字,音声,シンボル,平易な言葉などの利用者が必要とする形式に変換できるように,代替 テキストを提供する。
- 7.1.2 時間の経過に伴って変化するメディア:
- 時間の経過に伴って変化するメディアには代替コンテンツを提供する。
- 7.1.3 適応可能:
- 情報又は構造を損なうことなく,様々な方法(例えば,よりシンプルなレイアウト)で提供できるようにコンテンツを制作する。
- 7.1.4 識別可能:
- コンテンツを,利用者にとって見やすくしたり聞きやすくしたりする。これには,前景と背景を区別することも含む。
「7.2 操作可能に関する原則」 のガイドライン
- 7.2.1 キーボード操作可能:
- すべての機能をキーボードから利用できるようにする。
- 7.2.2 十分な時間:
- 利用者がコンテンツを読んだり使用したりするために十分な時間を提供する。
- 7.2.3 発作の防止:
- 発作を引き起こす恐れのないようにコンテンツを設計する。
- 7.2.4 ナビゲーション可能:
- 利用者がナビゲートしたり,コンテンツを探し出したり,現在位置を確認するのを手助けする手段を提供する。
「7.3 理解可能に関する原則」 のガイドライン
- 7.3.1 読みやすさ:
- テキストのコンテンツを読みやすく理解可能にする。
- 7.3.2 予測可能:
- ウェブページの表示や動作を予測可能にする。
- 7.3.3 入力支援:
- 利用者の間違いを防ぎ,間違いの修正を支援する。
「7.4 堅牢性に関する原則」 のガイドライン
- 7.4.1 互換性:
- 現在及び将来のユーザエージェントとの互換性を最大化する。
「7.1.1 代替テキストに関するガイドライン」 の達成基準
- 7.1.1.1 非テキストコンテンツ:
- 利用者に提示されるすべての非テキストコンテンツには,同等の目的を果たす代替テキストを提供しなければならない。ただし,次の場合は除く。
- a) コントロール、入力: 非テキストコンテンツが,コントロール又は利用者の入力を受け付けるものであるとき,その目的を説明する識別名を提供している。
- b) 時間の経過に伴って変化するメディア: 非テキストコンテンツが,時間の経過に伴って変化するメディアであるとき,代替テキストは,少なくとも,その非テキストコンテンツを識別できる説明を提供している。
- c) 試験: 非テキストコンテンツが,テキストで提示されると無効になる試験又は演習のとき,代替テキストは,少なくともその非テキストコンテンツを識別できる説明を提供している。
- d) 感覚的: 非テキストコンテンツが,特定の感覚的体験を創り出すことを主に意図しているとき,代替テキストは,少なくともその非テキストコンテンツを識別できる説明を提供している。
- e) CAPTCHA: 非テキストコンテンツが,コンピュータではなく人間がコンテンツにアクセスしていることを確認する目的で用いられているとき,代替テキストは,その非テキストコンテンツの目的を特定し,説明している。なおかつ,他の感覚による知覚に対応して出力するCAPTCHAの代替形式を提供することで,様々な障害に対応している。
- f) 装飾,整形,非表示: 非テキストコンテンツが,装飾だけを目的にしている,見た目の整形のためだけに用いられている,又は利用者に提供されるものではないとき,支援技術が無視できるように実装されている。
2.達成基準を満たすことのできる実装方法
実装方法は、JISでは規定されない。
6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件
「6.2 設計」 の 「6.2.1 要件の定義」
- b) 使用するウェブコンテンツ技術及び実装方法
- 注記2 各達成基準の具体的な意図及び各達成基準を満たすウェブコンテンツ技術及び実装方法に関しては,W3Cが公開する Understanding WCAG 2.0 及びTechniques for WCAG 2.0 が参考になる。
『WCAG 2.0』 の文書レイヤー
- WCAG 2.0
- How to Meet WCAG 2.0
『WCAG 2.0』 本文
WCAG 2.0
『WCAG 2.0』 の詳細な解説
Understanding WCAG 2.0
- 4つの原則
- ガイドライン
- 達成基準
- 意図
- ユーザーのメリット
- 事例
- 実装方法の一覧
- 用語説明
『WCAG 2.0』 のテクニック解説
Techniques for WCAG 2.0
- 各達成基準を満たすことのできる実装方法
- 一般、(X)HTML、CSS、クライアントサイド / サーバサイドスクリプティング、サーバサイド、SMIL、プレーンテキスト、ARIA に分類
- よくある失敗例
『WCAG 2.0』 の実践用サマリー
How to Meet WCAG 2.0
- カスタマイズ可能なクイックリファレンス
- 使用する技術(HTML、CSSなど)、適合したいレベル(A、AA、AAA)などの条件を指定して、必要な情報のみを一覧化
本文以外は、随時追加 / 更新が可能
- WCAG 2.0: 勧告(Recommendation)
- Understanding WCAG 2.0: 随時追加更新
- Techniques for WCAG 2.0: 随時追加更新
- How to meet WCAG 2.0: 随時追加更新
JISの解説や実装方法は「WCAG 2.0」文書を参照
「WCAG 2.0」 文書の読み方
日本語訳
非W3C技術の実装方法も今後追加予定
- WCAG 2.0(=2009年版JIS)は、特定の技術に依存せず、非W3C技術を用いたコンテンツにも適用可能
- 「Understanding WCAG 2.0」 及び 「Techniques for WCAG 2.0」 には、今後非W3C技術に関する情報が追加されていく予定
- 例えば、次のような技術は各ベンダー企業が提供:
- Flash / Flex、PDF : アドビシステムズ
- Silverlight : マイクロソフト
- WAI-ARIA 関連の実装方法なども勧告化され次第、追加されていく予定
[参考] Silverlight の実装方法
まとめ
2009年版によるコンテンツ制作への影響
- 2004年版と比較して、大きく変わるわけではない
- アクセシブルなコンテンツの制作方法は基本的には同じ
- 2009年版では、基準がより具体的で明確になる
- ツールによるチェックが可能になる部分が少し増える
- 人間が判断すべき部分の手順と判定方法が明確になる
- 2004年版より広範囲をカバー
- 世界標準と共通の達成基準及び実装方法になる
- ただし、支援技術のサポート状況などを確認して、場合によっては、日本のユーザーに合わせた対処をしなければならない
参考
2009年版公示に向けた課題
- 「Understanding WCAG 2.0」、「Techniques for WCAG 2.0」 の日本語訳
- 日本のユーザーエージェント(特に、支援技術)における「アクセシビリティ・サポーテッド情報」の作成
- 各実装方法のサポート状況を調査する必要あり
- 検証のためのテストファイルを作成する必要あり